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英語屋は海外では通用しない!

前回、書いたように、大学在学時代から、通訳・翻訳、外資系勤務など、憧れの職業にすべてトライしてみたものの、「どれも自分に合わない」「本当にやりたかったことではない」と思った私は、自分が進みたい方向がわからなくなっていました。そこで、アメリカの大学院に留学したのですが(留学資金を貯めるには、給料の高い企業を選んだのは正解でした)、私は、ビジネス社会にはウンザリしていたので、在学時代から興味のあった女性学を研究するために、社会科学科に入学しました。 

私は、ESLなどの講座は一切、受けず、最初から大学院の授業に出席したわけですが、前回、書いたように、日本で英検1級、英語の通訳ガイドの免許を取得し、TOEFLも600点以上あったものの(今の仕組みとは違うので、現TOEFLの何点に相当するかは不明)、授業についていくのは楽ではありませんでした。とくに、標準的な英語を使う教授よりも、口語、俗語が飛び交うクラスメートとの会話の方が大変でした。 

語学を学ぶということは、その背後にある文化背景も学ぶということですが、語学の問題だけでなく、共通の体験や話題がないと、なかなか会話もはずまないのです。異国で育った者は、この共通体験の欠如に苦しむことが多々あります。(長年、住んでいると共通体験は生まれますが。) 

英語力以外のスキルが必要

その後、アメリカ企業で働いた際も、電話で相手の名前が聞き取れずに四苦八苦したことがありますが、スペルを綴ってもらっても早口だと書ききれないことがあり、大きな自信喪失につながりました。電話を取り付くという簡単なことが、英語になった途端、できないわけです。 
相手も一度くらい聞き直すだけなら対応してくれますが、何度も聞き直すと明らかに不機嫌になる人もおり、(インターネットがなかった頃なので)私は図書館で人名事典を借りて手元におき、聞き取れない場合は、すぐに調べるようにしました。(それから20年以上、アメリカ人の名前も非常に多様なり、今ではネイティブでも綴りにはよく四苦八苦している場面が。) 

たとえば、現地の日系企業勤務、または外資系企業の日本担当部門勤務であれば、語学のハンディは大目に見てもらえるでしょう。しかし、日本とはまったく関係のない日本語能力など求められていない職場であれば、当然、ネイティブ並みの英語力が求められるわけです。それがなければ、「仕事ができない」のレッテルを貼られます。 

つまり、「日本人、外国人としては英語ができるレベル」では、本場では通用しないということです。日本国内では、英語力は武器にもなり、それだけでも食べていくことは可能ですが、英語圏にいけば、当然、子供でも英語を喋ります。英語圏やグローバル市場でキャリアを積もうと思うなら、英語力は最低必要条件であり、英語力以外のスキル、専門性を身につけることが必須です。 

ただし、雇用主として、英語力か専門性のどちらを選ばなければならない状況に直面したときは、専門性をとります。英語だけできる人に、入社後、専門知識を学んでもらうより(分野・職種によっては不可能)、専門知識・スキルがある人に英語を学んでもうら方が可能性があるからです。また、何度も目撃してきましたが、IT分野に限らず、たとえば技術屋さん同士は、言葉が通じなくても、結構、相互理解ができるのです。言語は、あくまでもコミュニケーションの手段であり、必要なのは、仕事を成し遂げるための総合的なコミュニケーション力なのです。 

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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