Global Career Guide
アメリカ人の知人から相談を受けたときのことです。奥さんの連れ子の娘さんがロースクールに行っていたのですが、「やめたがっているので、ちょっと話を聞いてやってくれないか」ということでした。ちょうど、私は、お嬢さんをアルバイトで雇うことになったので、その時に、本人と直接、話をすることができました。
彼女の母親はフィリピン人で、フィリピンでは土木エンジニア、アメリカに来てからは会計士として働いていた人です(二人目の子ができてからは主婦)。
エール大学の教授である中国系アメリカ人が書いた『タイガー・マザー』が出版されてから、「タイガーママ」という言葉が巷で使われるようになりましたが、アメリカでもアジア系の親は教育熱心で知られています。アジア系アメリカ人の子供たちはたいてい、学校でAをとっても、誉められるどころか、「なんでA+をとらなかったの?!」と怒られるといった経験をしているのです。
彼女は、母親に「メディカルスクール(医学大学院)かビジネススクールに行くように」と言われ、学部でも医大予科(pre-med)を専攻したそうです。ところが、本人は、メディカルスクールにもビジネススクールにも行く気はなく、母親に言われて、渋々、ロースクールに入学したらしいのです。しかし、やはり興味は持てず、私が出会った頃には、休学し、公共政策(Public Policy)の分野を試すために、州政府でインターンをしていました。が、その分野に対しても迷っているようでした。
これまで母親の意向に沿って進路を決めてきたわけですが、「自分には合わない」「自分がやりたいことではない」ということで、彼女は進路について迷っていました。そこで、私は、自分の経験から、「迷ってあたり前なんだって。私も、あなたの年齢の頃、そうだったから。仕事って、外から見てるのと、実際にやってみるのとでは、全然、違ったりするから、実際にやってみないとわからないよ。いろいろ試してるうちに自分のやりたいことが見えてくるって。」とアドバイスをし、さらにこう付け加えました。
「公共政策で修士や博士を取った人を何人か知ってるけど、皆、給料、異常に安いよ。そういう喰えるかどうかわからない分野に進む場合は、お金持ちの結婚相手を見つけることだね」(または、私の知り合いである義理の父親の穀をつぶし続けるか 笑)
彼女は、看護学系に興味があるようだったので、
「看護の分野は、将来有望で、どう転んでも食べていける。何年か看護師として働いた後、医療情報科学で修士をとった人を知ってるけど、大病院の医療管理部門で働いていて、給料もいい。一人で息子さんを2人、育てたよ。」
結局、彼女は、看護学の修士課程に入学し、昨年、卒業。看護師の資格も取り、病院に就職しました。将来、看護教育職や管理職への道が開け、タイガーママも満足のようです。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。