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ビジネススクール(3) – 減少傾向の応募者

前回、書いたように、伸び悩む給料とは相反する学費の高騰で、アメリカでもMBAの価値が問われているのですが、それはビジネススクールへの応募者数にも表れています。

アメリカのフルタイムの2年制MBAプログラムへの応募者は、2009年から4年間減少を続けました。それも、世界各国の2年制プログラムMBAの応募者数に比べ、米ビジネススクールの応募者は著しく減ったのです。世界的に、パートタイムプログラムやエグゼクティブプログラム、オンラインプログラムへの応募者は増えているので、学生にとっては、仕事を辞めずに受講できる、こうしたプログラムは費用もリスクも低く、魅力的なのでしょう。

実は、今年、アメリカのフルタイムの2年制プログラムへの応募者は12%近く上昇し、2009年以来の伸びを示したのですが、その多くが海外からの留学生によるもので、国内の応募者数は、依然、伸び悩んでいます。

一方、アジアの2年制プログラムでは、今年、伸び率が鈍化したものの、近年、大きな伸びを示しています。アジアの企業、とくにインドや中国でのMBA取得者に対する雇用需要が伸びているのが一因でしょう。

長年、MBA市場を独占していた本家アメリカですが、GMATのスコアの送付先(つまり応募先)が、2000年には75%が米ビジネススクールだったのに対し、2010年には42%に低下しています。

経営難に瀕するビジネススクールも

留学生の割合が5割を超えている米ビジネススクールに、アリゾナ州フェニックスにあるサンダーバード経営大学院があります。同校では、昔から外国語の習得が必須で、元々、国際経営学の修士課程を設け、早くからグローバルな視野を取り入れてきました。

私は、フェニックスに住んでいた頃、同校の教授が経営する国際リサーチ会社で働いたこともありますが、社員は、同校の卒業生ばかりでした。当時は、各国の富豪の子息が多数、留学してきており、「卒業したら、世界的にすばらしい人脈ができるのだろう」とうらやましく思ったものです。

ところが、サンダーバードは、その後、大きく変貌してしまいました。応募者数は過去15年で75%も下落し、2012年、卒業時に就職先が決まっていなかった卒業生は76%で、前回、紹介したクレアモントに次いで、ランクインしたビジネススクール中、全米ワースト2、卒業後3ヶ月以内に就職できた学生は半数以下でした。

同校は、2012年会計年度400万ドルの赤字で、2450万ドルの借金を抱え、財政難に陥っており、キャンパスを営利大学(フェニックス大学のように企業が営利目的で運営する大学)に売却することになりました。これに反対した一部の理事らは辞任し、卒業生からも反対の声が挙がり、署名運動にまで発展しました。

卒業生が反対するのは無理ないと思います。昔は、名門校だったのが、今では、営利大学に身売りするような形になり、学校の評判がさらに低下することになりかねないのですから。かといって、破綻して廃校されても困ります。

実は、今年、米パデュー大学と提携していたドイツのビジネススクールが倒産しました(その後、救済されましたが)。今後も、こうして経営難に瀕するビジネススクールが他にも出てくることでしょう。

(次回へ続く)

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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