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ビジネススクール(5) – 最後に

ビジネススクール(5) – 最後に

ビジネススクールについて、4回にわたり、いろいろ書いてきましたが、「それで、結局どうすればいいの?」という人もいるかもしれません。そういう人は、MBA Applyというビジネススクール入学に特化したコンサルティングサービスがありますので、そのサイトをのぞいてみてください。ウォートンでMBAを取得し、投資銀行やベンチャーで働いた経験のあるカナダ人が経営しています。

「MBAをとるべきか否か」と迷う人に対する彼のアドバイスは、非常に的を得ていると思います。 
http://mbaapply.blogspot.jp/2013/04/is-business-school-worth-it.html

1)マッキンゼー、ベイン、BCGなどのコンサル会社で働きたいなら、有名校(米上位16校、ロンドンビジネススクール、INSEAD)のMBAは必須。 
2)金融業界での実務経験がなく、金融業界で働きたいならMBAは必須。 
3)アメリカ国内で、エンジニアを含む非ビジネス部門からビジネス部門へのキャリアチェンジを考えているなら、MBAは必須ではないが、あると有利。 
4)業界を変えたいビジネス部門者。やはり、MBAがあると業界を乗り換えやすい。

MBAをとる必要のないケース

・すでにビジネス部門で働いており、コンサル会社や金融業界に転職する気のない人。現在の業界でキャリアアップをしたいなら、パートタイムプログラムやエグゼクティブプログラムで十分。(これは、日本国内のMBAプログラムにもあてはまると思います。) 
・近い将来、起業したい人。

MBA擁護者らは「MBAをとると生涯所得がこんなに違う」「投資分は3.5年で回収できる」などと言うのですが、同氏の意見は「MBAの長期的価値、いや中期的価値すらも考えるな。そんなものは人によって意見は違うのであてにならない。大事なのは、卒業後すぐの短期的価値だ–卒業後に自分が得たい職を得るのに有利か?短期的価値がなければ、中期・長期的価値はもっとない」というものです。

起業家にMBAは不要

20年前は起業に力を入れるビジネススクールは、アメリカでも少なかったのですが、今では、前回、紹介した名門オックスフォードでもentrepreneurshipに力を入れなければならない状況で、毎年、シリコンバレーの起業家を招待するプログラムまであります。

しかし、実際、MBAを取得して起業する人は、アメリカで少数派です(MBAを取得して、スタートアップに勤める人たちは多いですが)。基本的に、ビジネススクールは、企業家を育成するところ、企業でのキャリアアップを狙う人たちが行くところです。

世界的に有名な起業家には、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、最近ではマーク・ザッカーバーグのように、大学さえ卒業していない人たちが珍しくなく、バージン・アトランティックの創業者、リチャード・ブランソンに至っては、学習障害(dyslexia)を抱え、高校すら卒業していません。

日本の有名起業家で、ハーバードなどでMBAを取得した人たちが何人かいますか、そういう人たちは、それまで敷かれた線路の上を歩いてきた日本のエリートで、アメリカのビジネススクールに行って初めて「サラリーマンとして大企業に勤めるのが一番だと思っていたが、そうではない」と気づくようです。私を含め、元々、敷かれた線路などなく、主流から外れている人は、そういう気づきをするために、わざわざ高い学費を払ってビジネススクールに行く必要はないと思います。

私も、MBAを取得後、起業(という大それたものではなく、独立)したわけですが、正直、MBAは必要ではなかったです。ただし、当時は、まだMBAが溢れていなかったので、有名校のMBAでなくても、コンサルティング業務をする上では、信用を得るという意味では役に立ちました。

しかし、10年にわたり投資家として得た、今ある知識や経験を20年前、私が持っていたとしたら、「安めの州立大学のビジネススクールに行き(私の場合、ハーバードに行くことはないので)、学費と生活費に1000万円費やしていたか?」というと、していなかったでしょう。その1000万円は投資して増やした方がずっと投資対効果が高いですから。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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