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例のコマーシャルに関するコメントには、アジアからは「西洋は常に東洋人をステレオタイプ化しているのに、東洋がちょっとやると、これだ」といった声が結構あり、東洋人や他の非白人が、西洋でどれだけステレオタイプ化されているかを示す動画を掲載している人たちもいました。「うちの国では、車の宣伝で芸者が車の中でお茶をたてているよ」というコメントもありました。(仏自動車メーカー用にイギリスの広告代理店が作ったものです。残念ながら、コマーシャル全体が閲覧できないので、その意図がわかりません。)
ハリウッドも、非白人に対するステレオタイプに関しては誰にも負けていないと思いますし、2012年にEUが作ったコマーシャルも抗議を受け中止されましたが、植民地時代から意識が変わってないのかと思うくらい、元植民地の人たちの神経を逆なでするものだったと思います。
実は、私は前々回、紹介した日本在住のアメリカ人女性の故郷に滞在したことがあります。中西部の小さな田舎町で、何人だろうがよそ者はすぐにわかりますので、ジロジロ見られました。白人以外見たことのない人が大半ですから、子供に至っては、買物をしていると寄ってきて下から顔をのぞきこんで来ましたし、町のプールに行けば、子供たちが寄ってきて私を囲み、「どこから来たの?」「日本?」「ワーイ、日本から来た人に初めて会った!」と大はしゃぎでした。
さらには、2つの町を合わせて一つしかない小学校で「日本の話をしてほしい」と頼まれ、当日、全校生徒が集まった中で、日本についてプレゼンもしました。まさにパンダ扱いでした。(私は成人していましたのでパンダ扱いでも平気ですが、一人、韓国から白人宅に養子にもらわれた子がおり、よく学校でからかわれていたようです。)
そうした話を、当時、東京に住んでいた、そのアメリカ人女性に言うと「アメリカで、そんなことが起こるなんて思っても見なかった!」と言ったのです。自分は、アメリカでは人種的にはマジョリティに属するので、非白人がどのような経験をするかは知らないわけです。
ビジネススクール時代に、私立の小学校に子供を通わせている黒人女性が、「クラスで黒人は、うちの娘一人で、珍しいので、クラスメートらが娘の髪の毛を触りにくる」と言っていました。その南カリフォルニアの地域は、長年の間、黒人の居住が敬遠され、2010年時点でも、黒人居住者の割合は2%です。マイノリティが多いロサンジェルスでも、母親を日本人、父親を黒人に持つ大学教授の友人は、店に入ると疑われてつけ回されるなどのエピソードに絶えません。(見かけ的には南太平洋系に見えるのですが。)
白人が優位に立つ国に生まれ育ち、初めて白人優位でない国に住んだ人は、そこで初めて人種的にマイノリティとしての立場を経験するわけです。(なお、「優位」「マイノリティ」というのは数の問題ではありません。)
自分が年をとって初めて高齢者の人の気持ちがわかるように、町で車椅子を押してみて初めて車椅子の人の視線でものが見えるように、世の中、自分で経験してみないと実感できないことだらけだと思います。そういう意味で、価値観の違う国に住んでみる、人種的にマイノリティになってみるというのは非常によい経験になると思います。
私は、日本では、白人や黒人よりも、アジア系の人たちが一番差別されていると思っていますが、一歩アジアを出れば、日本人も中国人も韓国人も一緒くたなのです。アナタが日本人であろうが中国人であろうが、そんなことは世界の大半の人にとって、どうでもいいことなのです。そういう経験をすると、せまい日本で、「中国人がどうの」「韓国人がどうの」というのがバカらしくなるでしょう。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。