Global Career Guide
「私は海外で就職するつもりはないから、人種どうのこうのは関係ない」と思ったら大間違いです。
日本国内の外資系に応募しようとしていた人で、英文履歴書の職歴に「○国で黒人客宅を訪れてインタビュー調査」と書いていた人がいました。人種事情は各国で違うので、その国では許される発言かもしれないのですが、必要でない限り、履歴書や面接で人種や民族には触れない方が無難です。
応募先に「そのように人種・民族問題に鈍感では困る」と思われ、それで落とされるということもあり得ます。企業としては、本社や他国に出張に行ったときに不用意な発言をされて、人種差別で訴えられては困るのです。
日本では「外国人=foreigner」「外国=foreign country」「外資系企業=foreign company」と丸暗記して、平気で使う人が多いようですが、英語の“foreign”には“外””異質”といった排他的なニュアンスがあり、響きのいい言葉ではありません。
それに、日本人も海外にいけば「外国人」になるわけで、何が「外国」「外」かは視点の問題です。ブラジル生まれのレバノン系移民でフランスで教育を受けた人が日本企業のCEOになったり、カナダ人がアメリカ企業の日本子会社のCEOになるようなグローバル時代には、そぐわない表現だと思います。
「外国」は、文脈によって”abroad””overseas””other countries”を使う方が英語らしいですし、「海外(外国)の顧客」は“foreign customers”でなく“overseas customers”、「海外(外国)からの来客」は“foreign visitors”ではなく“overseas visitors”を使った方が響きがいいです。留学生も“foreign students”より“international students”の方が好ましいのです。
日本に進出している外資系企業を英語にする場合、そのほとんどは多国籍、グローバル企業ですので、”multinational company”(略して”multinational”)や”global corporation”が使えます。
アメリカ企業に応募するのであれば、「アメリカ企業に勤めていた」ということをアピールすべきですので、職歴には具体的に“US company”と書くべきです。
「外国人と仕事をした」場合も、英語でやりとりをしたということが言いたいのであれば、“worked with foreigners”ではなく、”worked with English-speaking professionals”(英語話者の専門職らと仕事をした)、 “Interpreted for an English-speaking manager and Japanese-speaking staff” (外国人マネジャーと日本人スタッフの通訳をした)という表現を使いましょう。多様な文化背景の人たちと働いた経験をアピールしたければ、”Worked with multicultural teams”(多文化チームと働いた)と言えます。
ただし、やはりアメリカの企業に応募するのであれば、“Interpreted for an American manager”(アメリカ人マネジャーのために通訳をした)と国名を入れて、アメリカ人と働いた経験をアピールすべきです。そうでなければ、「インド人の上司」のように、不必要に、その人の国籍や出身地には触れない方がいいでしょう。
他の言語でも同様です。北京語でやりとりしたのであれば、“Worked with Mandarin-speaking engineers”(北京語話者のエンジニアらと仕事をした)と言えます。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。