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大学を出ても職がない(1)–雇用市場の変化

先日、米雑誌のサイトに「今後10年、いい仕事と悪い仕事はどこに?(Where the Good and Bad Jobs Will Be, 10 Years From Now)」という題の記事が載っていました。

下記のグラフで鮮明なように、過去60年、労働者におけるワーキングクラス(労働者階級)が占める割合は50%から20%に激減しました。ワーキングクラスの職というのは、製造業や建設業、輸送業の現場に関わるような仕事です。

一方、1990年ごろから増え、今では労働者の半数近くを占めるようになったのが、サービスクラスです。これは、最近、需要が増えている医療サービスや、小売業や飲食業などの職で、その多くが低スキルかつ低賃金職です。アメリカでは、この先10年、新たにな職の6つに1つがサービス職と予測されています。

(出典:TheAtlanticCities.com)

こうした傾向は、先進国なら、どこでも似たようなもので、金融危機が引き金となった不況後、アメリカで一番失業率が高かったのがブルーカラー(blue collar)職ですし、日本では、不況になって、工場の派遣行員のクビ切りが問題になりました。今回の不況で、すでに衰退していたアメリカのラストベルト(rust belt)と呼ばれる工業地帯は、最後の決定的打撃といえるようなものを受けたわけですが、ブルーカラー職でも家やボートが買え、企業の退職者年金で老後が安泰な時代は終わりました。

先日、日本国内では、工場減少に伴い、工業高校への入学者が1965年から2013年の間に4割減ったという記事がありました。少子化で大学の生き残りも大変ですが、より広く学生にアピールするためか、「工業大学」から大学の名称を変更する大学も現われました。

大学を出ても仕事がない

このコラムの読者の大半は大卒のホワイトカラー(white collar)でしょうから、皆さんが一番関心があるのは、上記のグラフの残る一本の「クリエイティブクラス」でしょう。

「クリエイティブクラス」とは、10年ほど前に都市計画の理論家(である冒頭の記事の著者)が提唱した社会経済階級で、脱工業化(post-industrial)都市の経済成長の主な推進力となるといわれました。同氏の理論には批判も多々あり、今回の不況で、その理論は証明されなかったと思いますし、私は、このクラスは「知的労働者」と同義で使っていいと思います。上記のグラフでは、1990年までは伸びる傾向にあったものの、過去20年ほど、そして今後も、ほぼ横ばい状態です。

このコラムでも、ロースクールやビジネススクールを出ても、もはや職があるとは限らないことを書いてきました。今、先進諸国で失業率が一番高いのは若者で、アメリカの20~24歳の失業率も、先月時点で、まだ12%あり、10代(21%)に次いで高いのです。背に腹は返られず、大卒でなくてもいい仕事に就く若者(つまり、underemployed)は4割以上に達しており、また最低賃金で働く大卒者も10年前より7割以上増えています。そして、彼らが大卒未満者の雇用を奪い、大卒未満者の失業率がさらに増えるという結果につながっています。

世界的に大不況だったとはいえ、なぜ、このような状況が起きているのか、次回、見てみましょう。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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