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大学を出ても職がない(2)–学位の大量生産?

前回、大学を卒業しても就職できない人が増えていると書きましたが、アメリカでは、短大を含む大卒であることが必要とされている職は、全体の27%しかなく、一方、就労者の47%が大卒だというのです。

米労働省の予測によると、2022年までに506万の雇用が創出されるものの、大卒であることを必要とする職は27.1%(四大卒である必要がある職は23%)で、1996年に比べ、2.1パーセンテージポイント増でしかありません。

アメリカの場合とくに、ここ10年ほどの学費の高騰はすさまじく、公立大学ですら卒業時に何万ドルという学資ローンを抱えている人は珍しくありませんから、近年、「大学に行く価値はあるのか?」という議論が起こっています。はっきり「価値はない」という識者らもいます。

新興国でも

米国内では「(上記の)労働省の統計には問題あり」という声もあるのですが、こうした傾向はアメリカだけではないのです。

たとえば、韓国は、世界的にも大学進学率が7割以上と非常に高いのですが(OECD加盟国平均56%)、大卒者が雇用を上回る数が5万人で、反対に高卒者は3万人以上不足し、これが国のGDPにもマイナスに影響をしていると言われています。

下記のグラフは、私立大卒者と高卒者の生涯賃金(2010年時点)の正味現在価値(NPV)を比較したものですが、高卒者の方が高いのです。

(出典:qz.com)

アジアの優等生と言われてきたシンガポールでも大卒者の就職難で、政府は大学入学者を学生全体の25%までに上限を定めることを検討しています。中国やインドでも、似たような状況です。

学位の大量生産?

下記は、アメリカの高卒者と大卒者の人口における割合を示すグラフです。25~29歳における高卒者は70年代から横ばいですが、大卒者は90年代後半から増えています。

(出典:CrookedTimber.org)

ビジネススクールの話の際に、MBAの取得があたり前になってしまい、その価値が薄まったと書きましたが、学部レベルでも同じような現象が起こっているといえるでしょう。また、大卒が増えたといっても、増えたのは二~三流校、コミュ二ティカレッジに行く人たちで、トップ校の卒業生数は変わっていないという説もあります。ビジネススクールやロースクールと同様、学部レベルでも、トップ校にはやはり価値がある、裏を返せば、トップ校でない限り投資対効果にはあまり期待できないということです。

日本では大学全入時代が叫ばれて久しいですが、国内で進学にしろ、海外に留学するにしろ、もはや大学を出たからといって就職できるとは限らず、生活できるだけの給料が約束されているわけでもない現実を踏まえて、進路を決める必要があるでしょう。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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