Global Career Guide
「大学を出ても職がない」シリーズで書いたように、 大学を出ても就職できないアメリカの若者には、アルバイト的な仕事(パートタイムの仕事や短期の仕事)で食いつないでいる人たちがいます。
数字的にはアメリカの失業率は低下しているのですが、先月の新規雇用の多くもパートタイム就労で、フルタイムで働く成人の割合は半数を切っています。
大学を出て就職できたと思っても、1~2年でレイオフに遭ったという人は少なくありません。私も、30歳になる前に2度レイオフに逢ったというアメリカ人を何人も知っています。今後も、いつレイオフされるかわからず、彼らは、そもそも「安定した雇用」というものを知らないのです。
彼らは、上の世代が中年になって何年も勤めた会社をいとも簡単にレイオフをされるのも目撃しました。企業への忠誠心など育つわけもありません。
そうした背景からか、若い世代、Millennial(「1000年(millennium)の」という意)と言われる1980年以降に生まれた世代は、普通に会社に就職し、ひとつの雇用主、ひとつの仕事に縛られたくないという傾向が強いといわれます。稼ぎが少なくても、意義のある仕事、生きがいを見出せる生き方を選ぶというのです。
実際に、満足のいかないフルタイム(正社員)の仕事を辞めて、パートタイムや短期の仕事を掛け持ちしているという人たちがいます。会社勤めのときよりも稼ぎは大幅に減り、生活は切り詰めないといけなくても、職場や上司に縛られず、一日のスケジュールを好きなように組めて幸せだということです。(日本のフリーターに似ています。)
こうした短期の仕事は、以前は”gig”と呼ばれましたが、最近では、とくにネットを介するものは「マイクロジョブ(micro job)」、こうした形で働く人は「マイクロワーカー(microworker)」と呼ばれるようになりました。
今後、こうしたマイクロジョブが爆発的に増え、アメリカでは2020年までに就労者の4割ほどがフリーランサーになるとの見方もあります。
フリーとして働く人は昔からいたわけですが、これまでと違うのは、テクノロジーの発達により雇用者と被雇用者がお互いを見つけやすくなったことでしょう。今では、スマホを通じて、雇用者は発注ができ、被雇用者は仕事を探せるのですから。
日本でもクラウドソーシング系の仕事マッチングサービスはいろいろありますが、アメリカで一番知られているのは、最近、合併したeLance-oDeskでしょうか。ELance-oDeskはIT系専門職指向が強いですが、それ以外に、もっと単純作業的な仕事、便利屋的な仕事のマッチングサービスも登場しています。
TaskRabbitでは、主に掃除、修理、お使いなど便利屋的なサービスを探している人と提供する人をマッチングするP2P(peer to peer)サービスとして始まりました。しかし、企業によるIT関連のプロジェクトなどもあり、TaskRabbitを通じて有名ソフトウエア会社のITマネジャーを短期で雇った会社もあるそうです。TaskRabbitでは、登録者の75%が大卒で、20%が修士号、5%が博士号を取得しているとのことです。
同様のサービスのFiverrでは最低料金は5ドルからというのが売りで、社会科学の実験にも使われるAmazon Mechanical Turkでは料金が何セントの世界です(私に言わせると「デジタル内職」ですが、「デジタル搾取工場(digital sweatshop)」との声も)。新興国を含め世界各国の人たちに公平な賃金を払い、コンピュータースキルを身につけるチャンスを与えるとうたっているMobileWorksでは「就労者が生活しているだけの賃金を」とのことですが、先進国で食べていける水準ではないようです。
TaskRabbitでは登録者の10%ほどがTaskRabbitで生計を立てているということで、大半の人にとっては副職の位置づけです。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。