Global Career Guide
前回、英語力が就職に大きく役立ったことを書きましたが、「そんなことはわかっている。だから英語を勉強しているんだ」という声が聞こえてきそうです。
日本では英語学習熱が旺盛で、確かに英語を勉強している人はたくさんいます。私の英語のツイッターアカウントをフォローして下さっている方たちも英語を勉強している人たちです。
中には、何年も勉強をし続けている人や、毎日、机に座って何時間も勉強する人もいます。
彼らを見ていて思うのはが英語学習自体が目的になってしまっているのではないかということです。(もちろん、語学学習が趣味という人もいますので、それならそれで構わないでしょう。)
英語に限らず、語学というのはコミュニケーションのツールであり、使わなければ意味がありません。目的はコミュニケーション、伝えたいことを伝える、であって、語学のマスターが目的ではないのです。「TOEICで○○点取るのが目標だから」という人もいます。TOEICの点数を足切りに使う企業もあるので、就職のためであれば、それも仕方ないでしょう。しかし、TOEIC対策マニュアルがたくさん出回っているように、TOEICの勉強というのは試験で高得点を取るための勉強です。日常英会話やビジネス英語ができるようになるための勉強ではありません。TOEICで高得点を取ることと使える英語ができることとは別なのです。
本当に英語力が必要とされる職場では、採用時に独自の試験を課したり、面接は英語で行われたりする場合が多いです。TOEICの点だけでは、その人が現場で使える英語ができるのかどうかを判断できないからです。
私が30年近く前に入社した在日アメリカ企業では、英検一級取得が条件で、直属の上司であるゼネラルマネジャー(日本人)が「英語のできる人、とにかくできる人」とうるさかったのです。ところが、いざ入社してみると、勤務場所は大阪の営業所ですから、同僚は全員、日本人でしたし、東京の日本支社にいるアメリカ人と話をすることもありませんでした。社内文書はすべて英語だったので、英作文力は必要でしたが、英語を話す機会は、アメリカ人支社長やアメリカからの出張者が大阪にやってくるときくらいでした。正直、英検一級などまったく必要のないポジションでした。(その上司は、書いた英語のレポートをチェックしてくれる人がほしかったのでしょう。)
「英語が話せるようになりたい」「海外出張があるので、海外転勤になるので英語ができないと困る」というのなら、TOEICの受験勉強をするよりも、もっと実用的な英語を学び、実際に英語を使う状況に身を置いた方がいいでしょう。
海外で就職したいと言うのなら、なおさらです。日本を一歩出れば、TOEICの点など役に立ちません。海外向けの履歴書であれば、海外で知られていないTOEICの点など載せても仕方ありません。海外で日系企業以外に就職しようというのなら、英語はできて当たり前なのですから(国にもよりますが)、載せるとすれば英語を使って何をしたかでしょう。
「キャリアアップのために英語を勉強している」という人も、TOEICの点数アップだけでなく、英語を実際に使ってみることが必要です。知り合いの息子さんが希望の企業に就職できたのも、英語を使って観光客をガイドしたり、留学生を支援したり、実践力を示すことができたからだと思います。「英語で○○しました」と言えることが大事なのです。
文法や構文など最低限度の知識は必要です(中高で学んだことをしっかりマスターしていれば事足ります。)しかし、それを修得したは後は実践あるのみです。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。