Global Career Guide
先月、数日、東京に滞在している間に、「管理職なんてやりたくないんです」という人たち数人に出会いました。
そのうちの一人は、3年前に某企業に転職して来られたのですが、管理業務を嫌って、今年、退職してフリーになられました。その後任の方も管理業務はやりたくないのですが、他に候補がいないため、渋々、引き受けられました。この方も、そのうち辞められるかもしれません。
この方々の職種は専門的、クリエイティブな分野であり、そうした作業が好きで、元々、その業界、職種を選んだわけですから、管理業務を嫌うのは理解できます。皆さん40代なのですが、年功を重ねるに連れ、現場の仕事から離れ、スタッフの監督、管理に回されるのは、サラリーマンであれば仕方のないことでしょう。専門分野に秀でた人材を失うことは企業にとっては損失でしょうが、自分のやりたいことに専念するために独立するというのは、個人にとっては一つのキャリアオプションです。
管理業務を嫌う人が多いのは、日本に限った現象ではありません。アメリカでのアンケート調査でも、大半の人が管理職に就きたくないという結果が出ています。今年、公務員を含むフルタイム就業者3600人以上を対象に行ったアンケート調査では、「指導的地位に就きたい人」と答えた人は34%に留まりました。Cレベルの(上級)管理職*になりたいという人は、わずか7%でした。
昇進に興味がない理由は「今の職に満足している(52%)」というのが一番で、次に多かったのが「長時間労働をしたくない、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を犠牲にしたくない(34%)」というものでした。(複数回答)
男女別に見ると、管理職を目指す男性は40%であったのに対し、女性は29%でした。管理職になると長時間労働を強いられる点が、とくに女性に嫌われるわけですが、「長時間労働をしたくない」という理由を選んだ割合は、男女とも同じでした。つまり、家庭(またはプライベート)を大切にしたいと思う人は、性別にかかわらず、管理職を敬遠するということでしょう。
キャリアと家庭の両立に関して、若い世代で興味深い傾向が見られるのですが、それについては、次回、触れたいと思います。
*「Cレベル管理職」とは、C-level Executives などと呼ばれ、CEO(Chief Executive Officer)、COO(Chief Operating Officer)、CFO(Chief Financial Officer)など肩書き(Title)にChiefがついた役職の人たちを指します。集合的にC-Suiteとも呼ばれます。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。