Global Career Guide
昨今流行のグローバルノマドワーカー。巷では聞いてはいましたが、先月、初めて出会いました。クルーズ船の中で。
クルーズ船の乗客というのは、大半がリタイアしたシニアです。カリブを周遊する3~7日くらいの短期のクルーズであれば若者や家族連れもいますが(ディズニークルーズに至っては子連ればかり)、14日以上のクルーズになると大半が60歳以上。今回、私が乗ったのは16日間だったため、50代は若い方で、平均年齢は60代後半だったと思います。
そうした中、若者や子供は目立ちます。乗客数2000人のうち20~30代の乗客はせいぜい10人くらいだったと思います。そのうちの30代のアメリカ人夫婦と会話をするようになり、「あなたたちのように若い人たちが、こんな年寄りばかりのクルーズ船で何してるの?」と聞いたところ、1年前からクルーズを乗り継いで世界あちこちを旅行しているというのです。
その船は、ヨーロッパから大西洋を横断してフロリダに到着し、フロリダから中米に向けて出発したのですが、その夫婦はヨーロッパから、その船に乗ってきたそうで、その前はヨーロッパを2ヶ月ほど旅行していたというのです。中南米クルーズはチリが終点だったのですが、降船後は南米各地をバックパッキングに旅立ちました。
「仕事してないの?」と聞くと、2人とも旅行に出る前に会社を辞めたそうですが、夫ジョンの方は独立請負業者としてデータ分析(マーケティング)の仕事をしながら、旅行しているそうです。
グローバルノマドワーカーといっても、行く先々で仕事を見つける人もいれば、彼のように母国の会社から仕事を請け負う人もいます。(日本から家族で海外に移住し、日本のクライアントから翻訳の仕事を請け負っている人も知っています。)
もちろん、後者の方が安定していますし、新興国で単発の仕事をするよりも高い報酬が得られるでしょう。
ともに32歳のジョンとヘザーは、「子供ができると旅行できなくなるので、その前に世界中を旅行しよう」と決めて、そのために3年、貯金をしたそうです。彼らの場合、目的は旅行であり、あと1~2年旅行をし、アメリカに戻った後は定職に就くのでしょう。
クルーズ船でのインターネットは衛星を使っており、非常に不安定で、場所や天候によってはつながらない場合もあります。今回も、ダイアルアップ顔負けの遅さで、メールの送受信や簡単な検索しかできませんでした。
スカイプやストリーミングなど帯域幅を食うものは使えないようにブロックされていました。(ただし、新しい船では、新たな衛星インターネット提供会社と提携し、もっと速いサービスを提供できるものもあるようです。)
ログオフするだけでも数分かかる場合もあり、その間も課金されます。料金は船会社によって違いますが、今回は、90分で59ドル、4時間109ドル、10時間219ドル、28時間429ドルでした。一分あたりの料金は79セントです。
こうしたインターネット環境ですから、ジョンも船上ではオフラインで仕事をし、陸に上がる度にファイルをアメリカの会社に送信していたようです。
しかし、一昔前は客室ではWiFiは使えず、二昔前は船上でインターネットなど使えなかったのですから(クルーズ船でインターネットがデビューしたのは1999年)、客室でインターネットが使えるようになっただけでも進歩です。
何日も陸に上がらない場合もありますので、そうでなければ、ジョンのように仕事をしながらクルーズすることは難しかったでしょう。
私自身、今回、ノートPC(Laptop)を持参せずに旅行中に原稿が書けるよう、フルバージョンのワードが使えるウィンドウズのタブレットを買いました。観光中も持ち歩けるよう7インチの小さいのにしましたが、無理なく原稿が書けました。
ジョンが世界を旅行しようと思った動機は、東南アジアを旅行した際に、長期旅行をしているヨーロッパの若者に何人もに出会ったからだそうですが(アメリカ人にはキャリアの方が大事)、私はジョンに出会って「こんな旅行の仕方もあるのか」と感心し、「私も若い頃、インターネットが発達していれば、こんな旅行の仕方ができたのに」とも思いました。
これを読んで「私も、そんな旅がしたい」という読者向けに、次回はクルーズについて書こうと思います。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。