Global Career Guide
昨年、「大学を出ても職がない」シリーズで書いたように、とくに文系が就職に苦戦しているわけですが、IT人材が不足する中、仕事を見つけるためにプログラマーを目指す文系出身者らもいます。
現在、全米に約40の民間プログラミングスクールがあると言われており、その大半が12~14週間の短期の養成コースです。(coding school, coding bootcampなどと呼ばれ、教室ベースのものと完全にオンラインのものがあります。)
何十もの職に応募しても職が見つからず、アルバイトをいくつもかけもちしたりしている文系の大卒者らが、こうした養成コースを受講後、プログラマーとして就職するのです。中には、受講生の大半がアート系出身というスクールもありますが、プログラマー職は、事務職やアート職などよりも給料がよく、かつクリエイティブである点も文系に人気のようです。
生粋のIT系よりも文系の方がコミュニケーション能力があり、たとえば同僚や経営陣、クライアントなどに、わかりやすく説明するのがうまいと、文系出身のプログラマーを好む企業もあるそうです。
ただし、就職率の高い人気の短期養成スクールは、誰でも入れるわけではなく、入学率は5%という難関なスクールもあります。また、最近では、スクールが乱立しすぎで、初級レベルのプログラマーは供給過多とも言われています。さらに、現職のプログラマーからは「プログラマーなんて、どうせ将来は機械化や新興国の労働者に置き換えられ、長期的には有望でない」という声も聞かれます。
将来、ITスキルが、ますます不可欠になるのは間違いないことから、義務教育にプログラミングを取り入れる国も出てきています。日本でも、2012年から中学の技術家庭科で「情報に関する技術」のなかで「プログラムによる計測・制御」が必修となりましたが、イギリスでは、昨年、小学校からプログラミングが必修となりました。小学校からプログラミングを必修としている国は、エストニアなど他にもありますが、G8国としてはイギリスが初めてです。
やはりIT人材不足に悩む英IT企業が、何年も前から英政府に働きかけていたそうですが、2013年に公式カリキュラム(学習指導要領)の大幅改定が行われ、チャンスが訪れたというわけです。
「学校は企業のプログラマー養成機関ではない」「プログラミングの知識経験がない教師を即席で訓練しても、プログラミングを教えるのは無理だ」という批判に対し、推進派は「数学者になるために算数を学んだり、小説家になるために作文を学ぶわけではないように、プログラミングを学んだからといって皆がプログラマーになるわけではない。
算数や作文と同様に、プログラミングも基礎能力として、すべての児童が学ぶべきだ。プログラミングを学ぶことで論理的に考える力、問題解決能力を身につけることができる」と主張しています。
日本でも、民間の小中学生プログラミング教室が増えていますが、英政府の試みが、どういった成果を上げるのか、日本政府も見守っているようです。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。