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雇用なき回復の理由(1)- ルーティンワークの減少

アメリカでは、金融危機後の大不況は、数字の上では2009年に終わったのですが、雇用がなかなか回復せず、雇用なき回復と呼ばれてきました。失業率は、昨年後半、6%以下に下落しましたが、労働参加率(Labor Participation Rate)は昨年から63%を切り、過去36年で最低の水準です(就職をあきらめ、就職活動をしていない人は失業率に含まれていない。)

米労働参加率(1976年~2015年)

 (米労働省Bureau of Labor Statistics)

減少するルーティンワーク

「労働参加率が下落したのは人口が高齢化したため」というエコノミストもいるのですが、先月、ある研究機関が、なぜ雇用が回復しないのかについて興味深い研究結果を発表しました。

これまで、アメリカのミドルクラスは事務職や工場の製造職などルーティンワーク職に支えられてきました。1990年までは不況で雇用が減っても、景気が回復すれば、すぐにこうした職は回復していたのです。

ところが、1990年の不況時から、景気が回復してもルーティンワーク職は回復しなくなり、2001年、2007~2009年の不況では、さらにルーティン職が減少しました。

下記のグラフで、2001年以降、人口におけるルーティンワーク従事者の割合が大きく減ったのがわかります。

人口におけるルーティンワーク就労者の割合

(1968年~2015年)

そして、2001年以降の雇用の伸びは、すべて非ルーティンワーク職から成るというのです。

下記グラフで、2007~2009年の大不況でルーティン職が大きく失われ、回復していないのがわかります。

職種別雇用の伸び

(2001年~2015年)

なお、この研究では、作業がルーティンか非ルーティン以外に、知的(cognitive)作業か、肉体(manual)作業か別にも分類されています。ルーティンの肉体作業には工場での機械操作や電化製品修理など、ルーティンの知的作業には事務・秘書、経理事務・帳簿付け(bookkeeping)、銀行窓口業務など、非ルーティンの肉体作業職は清掃や在宅ケアなど、非ルーティンの知的作業には 広報、財務分析、コンピュータープログラミングなどがあります。

つまり、前回の例のように、事務職や販売職からプログラマーにキャリアチェンジをすると、ルーティンワークから非ルーティンワークに転向したということになります。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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