Global Career Guide
前回、アメリカでは、先の大不況でルーティンワークの職が激減し、回復していないと述べました。
「職が失われた」というと、とくにアメリカでは「賃金の安い国にアウトソースされた」という話になるのですが、先の研究者らは、ルーティンワーク職は、海外へのアウトソーシングよりも、自動化・機械化(automation)によって置き換えられたというのです。
というのは、事務・秘書職などは、海外にアウトソースできないからで、ITによって置き換えられたということです。
たとえば、昔なら、秘書やアシスタントが電話で伝言を受け取っていたのを、今ではボイスメールが使われ、銀行の窓口業務はATMなどでどんどん機械化されているといったことです。(窓口業務を無人化する機器を発売する予定の日本メーカーも。)
下記のグラフに見るように、1980年代後半、ルーティン知的職は米労働人口の約17%、ルーティン肉体職は約16%だったのですが、今では、それぞれ13.5%と12%に下落しています。逆に、非ルーティンの知的職の割合が18%から22%以上に増えています。
職種別労働人口における割合
(1988年~2014年)
つまり、新たな雇用は生まれているものの、それは主に非ルーティンの知的職であり、「自動化で雇用が減っているわけではなく、増えている職種が変わったということだ」と研究者らは結論づけています。
最近、世界各地で最低賃金値上げ運動が起こっています。生活コストの高い都市圏では、時給10ドルや1000円では生活していけないのはもっともだと思います。ただし、低スキル職の賃金が上がって起こり得ることは、コスト削減のために、企業が、そうした職の自動化を進めることです。
IT化が急速に進む今、私たちは第三次産業革命の真っ只中にいると思っていますが、年齢や所得などの理由でデジタル化についていけない人が出てくるのは避けられないでしょう。
そういう人を救済する社会の仕組みは、もちろん必要ですが、変化の激しい世の中を生き残るためには、できるだけ自己防衛するしかありません。文系出身者らがプログラミングを学ぶのも、世の中の変化に対応するためのひとつの策だと思います。
ルーティンワークの職に就いていては、将来がないのです。
「大学を出ても職がない」という傾向は、教育現場が労働市場の変化についていけていないということの現われでもあり、小学生からプログラミングを教える国が出てきたのは、当然のことといえるでしょう。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。