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なぜ、あなたの英語は通じないのか(2)- 呪縛から逃れよう

前回、とくに英語初心者は、日本語の「○○」という単語に対し、英語にも相当する単語があると信じている人が多いと書きましたが、単語だけでなく、日本語にある概念だからといって英語(他の言語)にあるとは限りません。

私が昔から「的確な英語表現がない」と思っている日本語に「(男性が)渋い」があります。昔でいえばCharles Bronson(アメリカ人でも若い人は知らない)、今ならEd HarrisやWilliam Dafoeなどが渋い男優として挙げられます。

これに関しては、日本に住んだことがあり日本語が達者なアメリカ人女性とも「どの英語表現が一番近いか」を話し合ったことがあるのですが、これといった表現は見つかりませんでした。たとえばruggedという形容詞は男性に使われ、”How to dress rugged”(渋い着こなしの仕方)といった記事もありますが、Charles Bronsonにはあてはまるものの、知的なEd Harrisにはあてはまらないのです。

ただし、Google Imagesで”rugged man look”で検索すると、「この人のどこがrugged?!」という写真が多数出てきます。The Rugged Male.comにいたっては、Paul Newmanまで含まれていますが、Paul Newmanはpretty boyであり、どこから見てもruggedではありません。ここまでくると「どういう男性がruggedかは個人の趣味?」と言いたくなります。

なお、この一言で英語にできないShibuiは、Oxford Dictionariesや英語のWikiにも日本語由来の単語として掲載されています。(世界の日本サブカルファンの間では、Kawaiiの方が普及していると思いますが。)

「おつかれさま」「よろしくお願いします」「がんばってください」は英語で?

「おつかれさま」という挨拶も、そのまま英語にはできません。相手の労苦をねぎらう表現で、職場で先に帰る人に対しても使われますし、メールの冒頭にも使われます。退社する人に対して言うのならば、”Have a good one” “Have a good evening” “See you tomorrow”といった言い方ができますし、仕事などをねぎらうのであれば”You did a good job”などが使えます。

メールの「おつかれさま」に至っては、日本語でも形該化しており、”Hi, Hello”の意味しかないでしょう。(というと「じゃ、英語では”Hello”といえばいいんだ」という返事が返ってきたりするのですが、何もなくていいんです。私は、昔、英文ビジネスEメールオンライン講座を担当していたことがあるのですが、皆さん、余計なことを書きすぎ!)

このように「お疲れさま」もTPOによって英語の表現は異なるのです。同様に、「よろしくお願いします」や「がんばってください」も英語には直訳できません。

もちろん、”available”や”Have a nice weekend”など、逆に日本語にはしにくい英語表現もあります。

「日本語の○○は英語で何というのか」でなく「こういう場面では英語で何というのか」

“I work for a small and midsize company.” と言った日本の人がいます。a small and midsize companyというのは「中小企業」の直訳ですが、a companyと単数ですから一つの会社を指しています。(小企業と中企業の両方を指すのであれば、companiesと複数でしかあり得ません。)

つまり、「小さくかつ中堅でもある会社で働いている」という意味になり、物理的に不可能です。小企業か中企業かのどちらかであるべきなのです。

そこで、”Do you work for a small company or a midsize company? と聞くと、”I work for a midsize company. I wanted to say 中小企業。How do you say it in English?”という返事が返ってきました。

これこそ、日本語の単語に執着しすぎて、それが意味するところすら見失っている例でしょう。すでに”I work for a midsize company”と英語でちゃんと表現できていることにも、本人は気づいていないようでした。

「日本語の○○は英語で何というのか」ではなく、「こういう場面では英語で何というのか」という思考に切り替えてください。「○○は英語で何というのか」という呪縛から逃れられない限り、アナタの英語は上達しないと断言します。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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