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これまで「日本語を一言一句、英語に訳そうとするべきではない」と書いてきましたが、文でも同じことが言えます。日本語で一文だからといって、英語でも一文である必要はないのです。
下記の悪い例は、「オンラインで買おうかどうしようか迷っていた物が、迷っているうちに売り切れてしまった」という日本語を英語でも一文で表現した典型例です。日本語で一文だからと英語でも一文に収めようと日本語の構文をそのまま英語に置き換えたため、主語の長い頭でっかちな複雑な文になってしまっています。
x What I was debating whether to buy online got sold out while I was debating…
(迷っているうちに、オンラインで買おうか迷っていた物が売り切れた)
さらに「オンラインで買うかどうか迷っていた物が売り切れた」を直訳したため、何に迷っているのかが明確ではありません。(これは英語の問題ではなく、ロジックの問題です。)
日本語が透けて見える私には「買うかどうか迷っていた」というのがわかるのですが、この文をネイティブスピーカーに見せると、「オンラインで買うか、オフラインで買うか迷っている」と読みます。
何が言いたいのかを日本語で考え直すと下記のようになります。
「オンラインで買いたい物があったが、買おうかどうしようか迷った。迷っているうちに売れてしまった」
これを英語に置き換えたのが、下記の例です。すっきりした表現となり、これならネイティブにも通じます。
○ There was something I wanted to buy online, but I debated whether to buy. While I was debating, it sold out.
これをさらに英語らしくすると、下記のようになります。
○ While I was debating whether to buy something online, it sold out.
実は、上記の例文を著書『ロジカルイングリッシュ』で使いたかったのですが、「debate = ディベート、と覚えている人が多いので、違った表現を使ってほしい」と出版社に言われたのです。そこで、”I was thinking about buy something online”などと考えましたが、どうしてもdebateのニュアンスが出せません。そこで著書では別の例文を使いました。(私はdebateの使い方を紹介する良いチャンスだと思ったのですが…)
英和辞典でdebateを引くと、「討議する」以外に「熟考する、思考する」としか出ず、実際に、どのような場面で使われるのか、thinkやponderとはどう違うのかなどがわからないでしょう。(この辺は辞書にも問題がありますが、辞書の弊害に関しては次回述べます。)
これを機に「どうしようか迷っている」「決めかねている」という場合(つまり、「自分の中でディベートする」)、debateを使うということを覚えてください。「debate=ディベートする」と単語の意味を暗記するのではなく、下記のように用例、文章で覚るようにしましょう。
・ I’m debating whether to buy a new computer.
・ I’m debating which offer to take.
・ I’m debating between electrical engineering or computer science as a major.
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。