Global Career Guide
さらに、ツイッターやEメールの英文でよく見かけるのが論理の飛躍です。皆さん、まったく気づかずに起こしているようです。
英語の向こうに日本語が透けて見える私には、その真意を推し量れるのですが、アメリカ人など日本語が透けて見えない人に見せると「何が言いたいのか、意味がわからない」と言います。
たとえば、下記の文ですが、「日本の大学の夏休みは7月下旬に始まる」という日本で共有されている認識を踏まえたもので、そうしたことを知らない人には、なぜ7月初旬には旅行できないのか理由がわかりません。
X It’s difficult for college students to travel abroad in early July.
(大学生が7月初旬に海外に行くのはむずかしいです。)
ですから「日本の大学の夏休みは7月下旬に始まる」ということを一言加えた方が、コミュニケーションはスムーズに行くのです。(断る場合に理由を添えるのは必須です。)
○ College summer break doesn’t start until late July in Japan, so most college students can’t travel abroad in early July.
(日本では大学の夏休みは7月下旬まで始まらないので、大半の大学生は7月初旬には海外には行けません。)
こういうことを言うと、「全部、説明しないといけないなんて面倒くさい」という返事が返ってきたりするのですが、異文化間コミュニケーションというのは面倒くさいものです。価値観や慣習の違う環境で育った人に、「一を聞いて十を知れ」というのは無理な話です。「面倒くさい」などと言っていたら、意思の伝達はできませんし、語学はマスターできません。
下記の例ですが、英語的にはまったく問題ありません。問題は英語ではなく、ロジックにあります。
X I got so drunk that I started drawing. (酔いすぎて絵を描き出した。)
“I got so drunk that I couldn’t even walk”(酔いすぎて歩けなかった)なら通じます。酔うと知覚や運動能力が鈍るというのは科学的に証明されているからです。しかし、酔いと絵描きにはつながりがありません。
上記の文が意味を成すには、「常日頃、酔うと絵を描く癖がある」、または「日ごろ、絵など描かないのに、酔って絵を描いてしまった」のどちらかの背景説明が必要です。
○ I got so drunk that I started drawing. For some reason, I start drawing when I get drunk.
○ I never draw, but I got so drunk last night that I started drawing.
「英語は論理的、日本語は非論理的」という人がいますが、日本語でも論理的に文章を構築できる人はいくらでもいます。論理の通らない英文、あいまいな英文を書いている人は、日ごろ、日本語でも同じようにあいまいな表現をしている場合が多いのです。
私は子供のころ、作文が大嫌いだったのですが、アメリカの大学院(社会科学系)で、毎週、本を何冊も読んではレポートを書かされるという「試練」を受け、まず英語で文章が書けるようになり、日本語でも書けるようになりました。
痛感したのは、日本の小中高で文章の書き方や論理の構築の仕方を学ばなかったということです。(そして、突然、大学に入ってレポートを書くように言われ、今、考えると目もあてられないような駄文を書いていました。汗)
日本語英語にかかわらず、論理的に話をしたり、書いたりできない人は、そういう訓練を受けていないだけだと思います。英文法の勉強ばかりでなく、論理的に考え、文章を組み立てる練習もしてみてください。きっと英語力に結びつきます。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。