Global Career Guide
8月初旬に、東京に数日、滞在したのですが、外国人観光客の多さには驚きました。中国人を初めとするアジア系観光客が多いのは予想していたのですが、白人も多かったです。新橋の飲み屋街でも白人でいっぱいの店や、30分300円飲み放題の店で飲んでいる白人の若者を見かけました。神保町でも見かけましたが、あの方々は住人でしょうか?(それとも、海外からの古書収集家?)
表参道は平日なのに、世界各国からの若者で鮨詰め状態で、飲食店だけでなく、地下鉄に降りるエレベーターにも列ができ、さまざまな言語が飛び交っていました。
夏にニューヨークやローマに行くと、観光客だらけで道を歩くのも一苦労で辟易するのですが、表参道は、まさにそんな状態で、東京も、そのレベルに近づいてきたのでしょうか。
今年8月の訪日外国人観光客は、前年比63%だったそうですが、それを体感した感じです。9月には昨年の年間総数を超え、今年通年で2000万人に迫る勢いです。政府目標は2030年に年間3000万人だそうですが、オリンピックの年には、どれだけの混雑になっているのか…
といっても、観光大国フランスでは海外からの観光客数は年間8000万人を超えているそうですから、それに比べればまだまだですが。
こうした状態ですから、皆さんも、外国人に道を聞かれることが増えたのではないでしょうか。名古屋も高山に行く外国人観光客の通り道として定着しつつあるようですが、外国語表示の対応が遅れており、名古屋在住の友人は、迷っている外国人に名古屋駅周辺で、よく道を聞かれるそうです。
ホテルなどは、すでに三カ国(英語、韓国語、中国語)で対応しているところが多いですし(私が東京で泊まったホテルの室内の洗濯乾燥機は、使用方法が3カ国で表示されていました)、観光客の多い地域ではメニューも3ヵ国語用意しているところがあります。
たとえば、「ここはアジアの特別免税地区?」と思わせるようなアジア人観光客でひしめき合う道頓堀のラーメン屋では、メニューや食券機には1、2…と番号がふってあり、注文・受注がしやすいようになっていました。付近の居酒屋も3ヵ国語のメニューが整っていました。
居酒屋では、次々に入ってくるアジア系観光客に店員が「二階へどうぞ」と言うと、皆、二階に上がっていくので、店員に「二階へどうぞ、で通じるってすごいね」と聞いてみたところ、「Upstairs Please」と言っても、通じないことが多いそうです。大阪は圧倒的にアジア系観光客の方が多く、英語ができない韓国や中国からの観光客が多いからです。(道も英語のできない韓国人観光客に聞かれることが多く、大阪では、英語より韓国語や中国語を勉強した方が役に立ちそうです。)
チェーン系のコーヒーショップでも、店員は英語での注文に対応していましたし、昨年、大阪の地下鉄で中近東の女性に英語で説明している駅員も見かけたことがあります。「駅員さんも英語が流暢になったものだ」と感心しました。
やはり人間、必要に差し迫ると何とかするものです。日々、外国人と接している飲食店や小売店で働く人たちは、元々、「外国語が使いたいから」という理由で、そうした仕事に就いたわけではないと思うのですが、少なくとも仕事に必要なフレーズだけは、毎日、聞いたり、使ったりしているうちに身に付いてしまうでしょう。
本来、言葉とは、そういうものだと思います。赤ちゃんが親の話しているのを聞いて言葉を覚えていくように。
観光・飲食業界の現場で、日々、外国人観光客と接している人たちには、「きちんと英語をマスターしてから」「文法を習ってから」などと言っている時間はないのです。彼ら、彼らの雇用主の目的は商品を売ったり、サービスを提供したりすることであり、完璧な英語を話すことではありません。
毎日、机に座って勉強している人よりも、そうした人たちの方が実践的会話力が身に付くと思います。
皆さんも、街で迷っている外国人を見かけたら、積極的に声をかけて、どんどん会話を実践してはどうでしょうか。何度も言っているように、実践なくして会話力の向上はあり得ないのですから。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。