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マレーシアの頭脳流出(3) ─ 外国人にはチャンス

前回、書いた頭脳流出が、今、マレーシアのICT業界にも広がりつつあります。実は、ICT業界の給料(各国の物価水準を考慮した購買力平価)は、マレーシアよりも香港やシンガポールはもちろんのこと、中近東(とくにアラブ首長国連邦とサウジアラビア)の方が高く、ICT人材が中近東など海外に流れているのです。

マレーシアの人手不足は深刻で、地元人材の間で「ITスキルや英語力が不足している」という製造業は4割以上に達しています。英語が達者な人材ほど海外で仕事を見つけやすいでしょうから、国内に残る人材の英語力は相対的に低くなるのかも知れません。

前に書いたように、経済界からも「このままでは外国人を採用せざるを得ない」との声が出ていますが、マレーシア政府が掲げている「2020年までに高所得国の仲間入りをする」という目標も達成できないと危ぶまれています。

頭脳流出だけでなく、理工系を専攻する学生も年々減っており、マレーシア政府は2020年までに科学者やエンジニアが23万人以上不足すると予測しています。「先進国仲間入り」の目標を達成するためには、外国人労働者を受け入れるしかないという声もあります。

なお、マレーシアでは建築士も不足しており、毎年、新たに500人の建築士が必要なところが、新規登録数は年間50~100人にとどまっており、このままでは海外の建築事務所に仕事を奪われると業界では危惧しています。

マレーシアの外国人労働者といえば、これまで近隣諸国からの単純労働者が主だったのが、今後は高技能労働者も受け入れざるを得なさそうです。

マレーシアで働きたい日本人にはチャンス

こうした中、在マレーシアの日系企業も、人材不足に悩まされているようです。とくにエンジニア職や製造現場での管理職などが不足しているということですが、現にDaijob.comに掲載されているマレーシアでの求人広告を見ても、工場での管理職やIT職が目立ちます。

さらに、ビジネスレベルの英語ができれば、在マレーシアの外資系を狙うこともできます。

私がマレーシアで知り合った人たちに、シティバンクのバックオフィスで働いていたインド人が数人います。彼らはインド(チェナイ)でもシティバンクで働いていたそうで、インドにいる間にマレーシア支社での人材募集を見つけ応募したそうです。ですから、就労ビザはシティが手配しました。なお、彼らの給料は、マレーシア人社員の給料より高いそうです。

先にマレーシアのICT業界の賃金が他国より低く、頭脳流出の要因となっていると書きましたが、同国のICT専門職の賃金は、2015年、前年比7%以上、2010年比では36%伸びています。

東南アジアでの就職に興味があり、英語がある程度できて専門スキルがある人は、挑戦してみては、どうでしょうか。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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