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マレーシアで活躍する女性たち

前回、「頭脳流出は、マレーシアで働きたい日本人にはチャンス」と書きました。「マレーシアで働いてみたいけど、イスラム教の国では女性は働きにくいのでは」と思う女性もいるかもしれません。

「イスラム教国では女性の地位が低い」と信じている人も多いかもしれませんが、マレーシアの女性は社会のあらゆるところで活躍しています。

 マレーシアに行ったことがある人なら知っているでしょうが、入管職員にもスカーフをしたマレー系女性が何人もいますし、スカーフの上から帽子をかぶった空港の警備員にもいます。*(公務員はマレー系優先なので、華人やインド系はあまり見かけない。)

スーパーやデパート、銀行などでも、華人の女性はもちろんですが、スカーフをしたマレー系女性が働いていますし、管理職にも就いています。タクシーの運転手さんにもスカーフをした女性がいます。

マレーシア国立銀行の総裁は、2000年から国際経済学で博士号を持つ女性ですし、マレーシア最大のイスラム系銀行の頭取を務めた女性もいます。

日本企業がマレーシア政府と交渉すると、先方から出てきたのは女性ばかりで驚いたという話もありますが、マレーシアでは珍しいことではないのです。

日本よりも進んでいる女性の社会進出

アジア5ヵ国の企業3000社以上を対象にした最近のアンケート調査では、女性管理職の数は、日本(19%)はもとより、香港(28%)やシンガポール(27%)よりも、マレーシア(37%)の方が多いという結果が出ています。ちなみに、マレーシアの次に多いのが中国(32%)です。(調査対象企業の規模などは不明。)

実は、マレーシア政府は、2011年に株式公開企業(上場企業とは限らない)で、2016年までに取締役の30%を女性で占めるという目標を掲げました。しかし、2015年時点で、その割合は株式公開事業で16%、上場企業で10%だったことから、2015年には「30% Club」を立ち上げ、2016年中に上場企業の取締役の30%を女性で占めることを新たに目標としました。

「30% Club」とは2010年にイギリスで始まったのですが、多様性が企業にとって有益であると信じる企業の会長やCEOなどが会員となり、自発的に社内での女性の登用を促すものです。クォータ制を強いるものではありません。イギリスでは、設立以来、上場企業の女性取締役の割合が倍増し、26%に達しています。

マレーシアでは、「30% Club」設立当時、株式公開企業250社の会長、取締役、CEOが賛同しました。日本政府はすでに「2020年30%目標」は事実上、断念したようですが、日本の女性管理職の割合が30%に達する前に、マレーシアでは上場企業の女性取締役の割合が30%に達することは間違いないでしょう。

なお、やはりイスラム教の隣国インドネシアでの女性の活躍に関しては、「インドネシアで女性が働く環境とは?」を参考にしてください。

* イスラム圏では、国によって、女性はニカーブ、ブルカ、チャドールなどを着用しますが、マレーシアでは髪の毛を覆うスカーフのみです。スカーフは色や形などいろいろあり、ファッションを楽しめるようになっています。服は、肌を見せないように、常夏の中、長袖と長ズボンやレギンスなどを着用しています。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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