Global Career Guide
これまで、東南アジアでの就職のチャンスについて書きましたが、海外移住を希望している人の中に、ときどき「物価の安いアジアの国に移住しようと思うが、仕事は現地でどのように見つければいいのか」という人がいます。
ここで気をつけなければならないのは、「物価が安い」ということは「所得も低い」ということです。
たとえば、一般的に「マレーシアの物価は日本の3分の1」と言われていますが、マレーシアの大卒新卒の平均的給料はRM2500、日本円にすると7万円ほどで、給料もやはり3分の1程度です。
現地水準の所得を得るなら、現地水準の暮らししかできません。物価の安い国に移住して地元の人よりいい暮らしができるのは、物価の高い国ベースの所得を得るからです。日本並みの初任給RM7000(約20万円)をもらえれば、マレーシアでは、まあまあの生活ができます。
日本並みの給料がほしければ、駐在員など日本から派遣される形で現地に行く方法を探すべきでしょう。
同様に、物価の安い国でリタイアするというのも、日本で働いて貯めた貯金や年金を基にするから優雅な暮らしができるわけです。
ただし、一時「マレーシアでリタイアすると、生活費が日本の3分の1ですむ」という触れ込みに魅了された人たちが続出したものの、実際にリタイアしてみると、日本食を食べたり、(地元の野菜には農薬がたくさん使われているから)有機野菜を買ったりすれば、生活費は3分の1ではすまない、という結論に達したようです。
イスラム教徒は飲酒を禁じられており、アルコール類には高い酒税が課されているため、高いですし、私は乳製品も高いと思いました。医療費も日本より高い場合が多いです。
先日、フェイスブックで「最低賃金は、どこの国が一番高いか」という記事を投稿している在豪マレーシア人がいましたが、各国物価が違うわけですから、これも物価に対する賃金を見ないと意味がありません。
アメリカでは各地で、最低賃金を時給15ドルに上げるよう求める抗議が起きています。(アメリカの最低賃金は各州で定められており、州によって時給5.15ドル~10ドル。)ワンルーム(studio)が最低でも2000ドルするサンフランシスコや、ハウスシェアで一部屋間借りしで1200ドルするニューヨーク(それもマンハッタンではなくクィーンズ)では、時給15ドルでも食べていくのは大変でしょう。一方、1200ドルで一戸建てを借りられる地方都市では、「最低賃金15ドルは必要か?」という話になります。
「現地並みの給料でもいいから、その国で働きたい」というのは、もちろんアリです。お金には代えられない経験が得られるからです。
いずれにしろ、海外就職、海外移住をするには、まず現地に行って、少なくとも数週間、過ごしてみることをお勧めします。
私も3年前にマレーシアの各地を旅行して、どの都市なら住めそうかを調べ、2年前にはペナンに3週間、滞在し、「ここなら住める」と確信しました。それでも、やはり住んでみると、短期滞在では見えないところが見えてくるものです。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。