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私の著書に『面接の英語』がありますが、先月、改訂版の『新・面接の英語』がジャパンタイムズより出版されました。
14年ぶりのリニューアルとなったのですが、その間に人事採用、就職活動の形は大きく変わりました。社会のデジタル化が進み、スマホやソーシャルメディアが普及し、ビデオ面接もあたりまえとなりました。『新・面接の英語』の内容は、そうした変化を反映したものになっています。
本コラムでも、数回にわけて、デジタル時代の面接について書きたいと思います。
企業の採用担当者を対象に行われたアメリカでの調査によると、応募者にいちばん欠けているのは「応募する企業に対しての知識」だったそうです。
信じられない話ですが、実際に筆者が面接した人に、一通りこちらの質問を終えた後に「何か質問はありますか」と聞いたところ、「御社ではどのような業務をされているのですか」と聞いてきた応募者がいました。(イスからずっこけそうになりました…)この人はこちらの業務内容も知らずに応募してきたのです。
この応募者は筆者の知人の紹介で応募して来た人で、その知人から当社について聞くことはできましたし、当社のウェブサイトから情報を得たり、筆者の著書を読んだりすることもできたはずです。何も調べていないというのは、仕事をやる気がない、本気で職を探す気がない、と思われても仕方がないでしょう。
就職活動において履歴書は面接にこぎつけるための大事な道具ですが、実際に職を得られるかどうかは面接で決まります。履歴書が、自分という“商品”を売り込むパンフレットであるとすれば、面接は、それを見て興味を持った“買い手”に直接会って“商品”を売り込む場であるといえます。
マーケティングでは、市場・利用者のニーズに合わせて製品やサービスを売り込みますが、面接も同じです。自分という“商品”を売り込むには、自分のニーズではなく、“買い手”のニーズに焦点を当て、それに合わせて自分を位置づける必要があります。
そのためには、まず“買い手”のニーズを見極める必要があるわけですが、それには、その会社について情報収集をしておくことが不可欠です。
この情報収集方法が、スマホやソーシャルメディアの登場で大きく変わったのです。
デジタル時代の今、以前では考えられなかったような情報がネットで入手できるようになりました。今では各企業の面接で実際にされた質問内容などもネットに掲載されていますのです。
日本でも、楽天の「みんなの就職活動日記」や「転職会議」などの口コミサイトがあり、一部、外資系企業に関しても情報は掲載されていますが、国内外資系や海外での就職を目指すならば、海外のサイトもチェックしておく必要があるでしょう。
企業口コミ(レビュー)サイトの代表的なものに、Glassdoorがあります。アメリカやカナダの企業が中心ですが、在日外資系企業や日本企業も一部掲載されています。各社の求人情報のほか、応募者の実体験に基づいた採用プロセスや面接時の様子、面接での質問が細かく掲載されているのです。
また、社員や元社員の申告による職種別給与や福利厚生についても情報が共有されています。給与に特化したものであれば、やはりアメリカやカナダの企業が中心のSalary.comやPayScaleがあります。
今や至れりつくせりの情報がネットで閲覧可能なのですから、面接官がイスからずっこけないよう、しっかり調べておきましょう。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。