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都知事選でよく聞かれた「都議会のドン」。このドンは、日本の辞書では「スペイン語などのdonの派生語」と説明されていものもありますが、イタリア語の影響を受けたアメリカの俗語donが取り入れられたものと思われます。
アメリカではdonがマフィアのボスという意味で使われます。(”mafia don”で画像をネット検索するとM・ブランドー扮するコッドファーザーや米史上有名なマフィアのボスが出てきます。)
Mafia don Bernardo was arrested last week. (先週、マフィアのボス、ベルナルドが逮捕された。)
He was identified as a mafia don.(彼がマフィアのボスと判明した。)
日本語でも「マフィアのドン」という形で使われるので、そこから派生して、日本では政治界などの権力者にも使われるようになったのでしょう。
ただし、英語のdonは「都議会のドン」のように、マフィアなどの犯罪組織以外には使えません。
「政党や派閥の権力者」という意味では、英語ではbossが使われます。
The Democratic Party boss resigned over the email scandal.
(民主党のドンはメールスキャンダルで辞任した。)
Mr. Shultz has been appointed the new boss of the European Parliament.
(シュルツ氏が欧州議会の新たなトップに任命された。)
「都議会のドン」は、下記のように表現することができます。
He is considered the boss of the Tokyo Metropolitan Assembly.
(彼が東京都議会のドンと見なされている。)
なお、マフィアのボスにはdonの代わりにbossも使えます。とくにイギリス英語ではmafia bossの方が一般的です。
Mafia boss Frank was sentenced to life in prison.
(マフィアのボス、フランクは無期懲役の判決を受けた。)
The movie is based on the true story of the Italian mafia boss Ernesto.
(その映画はイタリアマフィアのボス、エルネストの実話に基づいている。)
ところで、スペイン語のdonは、元々、男性貴族や聖職者の名前の前につけられた尊称で、「ボス」という意味はありません。有名なスペインの小説「ドン・キホーテ(Don Quixote)」のドンも、これにあたります。今では、もっと広く尊称として使われており、名字につけられるSr.(Señor)とは違い、Donはファーストネームにつけられます。Juan Castroは、Don Juan、またはSr. Castro になります。
余談ですが、米ビジネススクール時代のクラスメートにキューバ出身の人がいましたが、おじいさんはスペインでdonの尊称をもつ名家の出身とのことでした。富裕層はキューバ革命で財産を没収されたわけですが、軍人だった叔父さんは処刑されたとのことです。(なお、スペインからキューバへの移民は、コロンバスが漂着した15世紀から始まりました。)
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。