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英会話力より英語読解力(2) ─ 多様な視点で情報収集

前回、英語で情報収集が不可欠な第一の理由として、日本語との情報量の違いを挙げました。今回は、日本語での報道の内容について触れたいと思います。

今年の米大統領選の日本での報道を見聞きし、その偏向ぶりには驚きました。(フランス在住の知人やアメリカで現地取材したジャーナリストにも同じ意見の人たちが。)
予備選から報道はトランプ候補に関するものばかり。それも扇動的なものばかりで、なぜ同氏が圧勝したかなどの分析が行われているものは稀でした。やはり反体制派の支持を集めた民主党のサンダーズ候補に至っては、日本の主流メディアではあまり報道されなかったので「誰それ?」という人もいました。

日本での報道は日本の大手新聞記事でも、独自で取材せずに「米新聞の記事を要約しただけ?」みたいなのがよく見られます。実際、海外の通信社の記事をそのまま和訳しただけのものや「米○○紙によると」といった“又聞き”報道も多いですね。

アメリカでは「○○紙は左派だから」と理解して読んでいる人が多いですが(というより左派は左派メディア、右派は右派メディアからしかほぼ情報を得ない)、日本では、とくに海外メディアは「品行方正で中立」と信じられ、どのメディアが左派か右派かなどと考えている人はジャーナリストにも少ないようです。

アメリカでは、今年のギャラップ世論調査で「メディアを少なくともある程度、信じている人」は32%と、過去最低の数字を記録しました。(自国民が信じていないメディアを他国民が手放しで信用するとは、なんとめでたいことか。)

実際に候補者の演説やディベートを聞いたこともない人たちが、日本国内の「○○が△△と言った」「米○紙は△△と伝えている」という報道だけで世論を形成していくのは恐ろしいです。(これは国内の事象に関しても言えることですが。)

間違った報道も

さらに海外の情報が日本語で伝えられるとき、大手新聞でも間違って伝えられている場合も珍しくありません。*

たとえば、H・クリントン候補の国務長官時代のメールサーバ問題に関しては、大手新聞も「私的メールアドレスを使用問題」と報じました。実際には自宅にメールサーバを設置し(それも国家機密の扱い許可を受けていない技術者が設置)、国家秘密を含む公務を行っていたこと(さらに問題発覚後、捜査が入る前にメール3万通を削除し、「国家秘密情報は個人メールでは扱っていない」と嘘をついたことなど) が問題になったのです。

ひょっとして「メールサーバ」というと理解できない人がいるから、わざと「メールアドレス」と報じたのでしょうか?(それとも書いている人自身が違いを理解していない?)

さらに日本人の分析が入っているものは“専門家”といわれる人のものでも、もっと「ウッソ~」みたいな(完全に事実誤認の)ものもよくあります。

そもそも、非常に複雑な米大統領選の仕組みを理解して報道したり、解説している日本人ジャーナリストは少数派だと思います。

多様な視点で

これは、海外の報道機関であれば“正しく”伝えているということではありません。(米国内の大統領選挙報道もいびつであり、大統領はメディアが選ぶのかと思わざるを得えないくらいです。実際に多くの米報道機関や株主がクリントン財団に寄付しているわけですが。)

たとえば、イラク戦争時、太鼓持ちとなった米メディアを信用していないアメリカ人には、イギリスの新聞から情報を得ていた人もいます。

英語では、英米だけでなく、アジアや中近東、ロシアなど世界各国から情報が発信されています。今は、それがネットで簡単に入手できるのです。世界にはいろいろな考え方があることを知り、視野を広げるためにも、ぜひ日本語以外で情報を得ていただきたいです。

*  海外での日本に関する報道も同様で、もっとひどいものもあります。たとえば、都知事選の投票率をワシントンポスト紙は「投票率27%」と報じていました。それも東京在住の特派員が。最終的な投票率がわかれば訂正するのかと思ったのですが、コメント欄で「間違ってるよ」と指摘する人が出ても、その後も訂正されていません。数年前、英フィナンシャルタイムズ紙で日本に関する記事で韓国の国旗が使われていました。日本・アジアに関する欧米の知識は、その程度です。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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