Global Career Guide

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人生を左右するキャリアチョイス

今夏、アラバマを訪問時、知り合いのアメリカ人の親戚R君の就活のお手伝いをしました。

R君は23歳。高校を出た後、工場の製造ラインやフォークリフトの仕事をしていましたが、毎年のようにレイオフに遭っていました。今夏もレイオフに遭った後で、就活中でした。

読書障害(dyslexia)があるため書類を扱うデスクワークは得意ではないことは本人も自覚しており、製造現場などでの仕事が希望です。

まずは彼の履歴書を見せてもらったところ、思ったよりうまく書けていたのですが、経歴が羅列されているだけなので、強みが前面に出るよう書き直しました。
実は、私は、これまでにブルーカラー(ガテン)系のresumeは作成したことがなく少し戸惑ったのですが、できるだけシンプルな単語を使うように心がけました。

私のアラバマの知り合いの息子さんが大手メーカーの製造現場に勤務していて、彼の親戚の男性も、最近、彼の口添えで、そこに入社できたというので、R君にも勧めてみると興味があるということでした。

ネットでその会社への応募を手伝っているうちに、R君から「先日、応募した企業から条件付きオファーが来た」とその手紙がメールで転送されてきました。

それは、地元の建設会社が請け負ったヨーロッパでの米連邦政府の建物の建設現場での仕事でした。単純作業ですが、新たなスキルを身につけることができ、履歴書に箔がつくものでした。もちろん渡航費も現地での住居費も出ますし、23歳の彼には信じられないような報酬が約束されていました。
条件付きオファーだったのは、政府関連の仕事のため、国家機密情報の扱い許可(security clearance)を得る必要があり、指紋を採取され、犯罪歴などを調べられて合格であれば採用されるという条件でした。

オファーと雇用契約書にサインしてメールで返送し、指紋採取のアポを取ろうとしていたとき、ちょうどR君が以前から応募していた第一志望の企業から面接の通知が届いたのです。

そこで、指紋採取のアポを入れるのを待ち、R君は面接に向かいました。面接後、R君から「面接に受かった。来週から出社する」との連絡が来ました。

私は、将来のキャリアを考えた場合、政府関連の海外勤務の方がいいと思ったのですが(私なら迷わず、そっちに行きました)、地元で得た仕事はR君が前から希望していたものであり、家族がいる地元に残りたいのだろうと思って、考え直すようには言いませんでした。

一生に一度のチャンスを逃す

それから数週間後、「新しい仕事はどう?」とR君に聞くと、なんと面接に受かって出社が決まっていたはずの会社に、結局、採用されなかったというのです! 「今からでも海外勤務の方に聞いてみたら?」というと、連絡したところ「すでに別の人を雇った」と言われたようです。

その後、R君は量販店での仕事を見つけましたが、スキルが身に付き、キャリアが築けるものではありません。時給900円くらいの仕事で、先の海外勤務の仕事とは、あらゆる面で天と地の差です。

彼は、一生で一度かもしれない大きなチャンスを逃してしまったのです。「面接合格。来週から出社」と言われていたのも、ちゃんと雇用契約を交わしていたのかどうか疑わしいのですが、そうした詰めの甘さだけでなく、長期的展望に立ったキャリアチョイスができなかったと言わざるを得ません。  
 

R君は、このままでは最低賃金並みの先のない(dead-end)単純作業にしかつけず、これまでのように毎年のようにレイオフに遭って、一生、職の安定は得られないかもしれません。私は、中年になっても、そうした状態で一向に生活は楽にならず、それどころか年とともに先細りになっていく人たちを何人も見てきました。(日本の非正規雇用のようなものです。)

We’re Our Choices

英語には We’re the produce of our choices(我々は自らが下した選択の賜物だ)という表現があります。フランスの哲学者サルトルは”We’re our choices”と言いましたが、同じ意味です。

私たちの人生は、さまざまな選択の積み重ねから成り立っています。
人間、一生のうち、人生の分かれ目で大きな決断をしないといけないときが必ずあります。勝負をかけないときもあるのです。皆さんも、そうした際に、後で後悔するような決断をしないよう、日ごろからチャンスが舞い降りてきたときにつかめる準備をしておかれますよう。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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