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ドイツの改革がお手本?

労働市場の改革が求められているフランス。独ハルツ法のフランス版と期待された改革案が骨抜きになり、「改革できなければ仏経済はおしまい」と市場原理重視の英米からはボロクソに言われています。

お手本とされるのが“EUの優等生”ドイツが断行した2000年代前半の改革。当時、経済はマイナス成長で、10%を超える失業率に悩んでいたドイツは、シュレーダー前政権が思い切った労働市場改革に取り組みました。やはりフランスのように、いったん雇用すると解雇するのがとてつもなく難しく、かつ恵まれすぎた社会保障が就労意欲を欠くということで、労働市場の自由化と同時に社会保障の改革が行われました。

私も2000年ごろドイツを訪問した際に、ケルン大聖堂の前で多数の若者が、昼間から飲酒しながらゴロゴロしていたのを覚えています。

改革2年後、失業者が500万人も増え、改革に対する批判が増し、政権交代に至りました。しかし、その翌年には失業率は減少に転じ、改革から10年で7%を切り、経済回復により、今では1990年の東西ドイツ統一後、最低のレベルまで落ちています。

ドイツの経済成長が労働市場の自由化によるものか、EU市場拡大で得た大きな外需かつユーロ安で輸出が伸びたからなのか定かではないのですが。多分、こうした要因が重なった結果なのでしょう。
ただし、こうした改革が格差拡大につながったという批判的な意見もあります。(同様に、経済を立て直したとされる英サッチャー政権も米レーガン政権も、右派は称賛し、左派は批判するので、視点、立ち位置によって意見は異なります。)

日本でも「同一労働同一賃金」

そして、やはり「ドイツに見習え」というのが日本。

「働き方改革」を進める安倍政権は、12月に非正規雇用労働者と正規用労働者の待遇格差を是正するための「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表しました。これは、正社員と同じ仕事をする非正規社員の賃金や賞与、手当、福利厚生、教育訓練は同等に支給されなければならないというものです。

私は「同一労働同一賃金」というのは男女間の賃金格差是正のことだと思っていたのですが、男性の非正規雇用が増えたことで、政府もやっと重い腰を上げたようで…
安倍首相は「非正規」という言葉をなくしたいそうですが、「正規」「非正規」と人を格付けし格差を助長する(「正規でないのだから待遇は悪くて当然」)ような言葉が早くなくなることを望みます。

実は、非正規(有効)雇用が増えているフランスも「同一労働同一賃金」は徹底しており、有期契約雇用者にも、無期契約雇用者と同様の待遇が義務付けられています。(有期雇用の70%が契約1か月未満というのはキツそうだけど…)

「同一労働同一賃金は日本での導入は無理」という悲観的な声もありますが、今後、法改正に向けて議論されていく中、有意義な導入を期待したいものです。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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