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多様な働き方–フルタイム勤務が当然ではない?

パートタイム大国のオランダ。「働く女性の77%がパートタイム勤務ってことは、食べさせてくれる人がいるからだよね」と思ったのですが、オランダではパートタイム勤務をしているのは既婚女性だけではなく、20代の独身女性にもいるようで。

(美容師や准看護師になるための)日本の専門学校のような中等職業学校を卒業した後、フルタイム(週36時間以上)で勤務する女性は25%しかいないそうです(男性は70%)。四大卒者では女性の75%フルタイム勤務なので、「やはり稼ぎ力によるのか?」と思ったのですが、医療や教育など女性が多い分野では、そもそもフルタイムの職がないそうで、そういう事情も関係しているのかもしれません。

仕事よりプライベート

子供がいる女性の場合、パートタイム勤務を希望するのは保育料が最低賃金より高く、「子供は週に3日以上保育園に預けるべきではない」といった考えが社会に浸透しているといった理由もあるようです。

また、オランダ女性の大半はパートタイム勤務に満足しており、フルタイムで勤務したい人は少数派で、キャリアよりもプライベートを重視する傾向が見られます。(在蘭アメリカ人には「4時半以降、取引先と連絡が取れない!」「こんなに働かない奴らは初めてだ!」と怒る人も。)

一方、経済的に独立していると見なされる女性は54%で、やはり離婚すると困窮する女性は多いようです。(離婚率は日本より高い。)

また、金融危機後、フリーや短期契約社員として働く人たちが全就労者の3割に達しており、「金融危機以前の誰もが無期雇用(正社員)で働くモデルは無理なので(!)、彼らがもっと雇用保障得られるようにしよう」という声もあります。

フルタイム勤務が標準ではない?

長い間、「オランダでは女性の地位が低い」と考えられてきたのが、仕事と生活の調和(Work Life Balance)が先進国で課題となってから、「ひょっとしてオランダが進んでる?」という見方が出てきました。

パートタイム職をかけもちしたり、パートタイム勤務をしながらフリーまたは短期契約社員として仕事をする(オランダでは増えているそう)といった形も可能で、パートタイム勤務で雇用保障や福利厚生が充実すれば食べていくための選択肢が増えると思うのです。

これは女性に限らず、男性でも「仕事よりプライベート」と思っている人は日本にもいくらでもいるわけで。やはりフルタイム勤務だけでなく、パートタイム勤務を含め、多様な選択肢があった方が、個々のニーズ(人生の段階でニーズは変わる)を満たしやすいですよね。

戦後、アメリカの後を追っかけてきた日本ですが(とくに小泉政権くらいから「日本の政治家は日本をアメリカにしたいんだな」と私には思え)、 どうせ真似するなら、(アメリカが「社会主義」と呼ぶ)政府主導のヨーロッパ大陸の制度の方が日本には合っていると思います。税金は上がるでしょうけど。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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